1. 磨き屋シンジケートの方々とお話させていただきました。

磨き屋シンジケートの方々とお話させていただきました。

磨き屋シンジケート インタビュー

■ 磨き屋シンジケートとは

 「磨き屋」という職業がありまして、みなさんの身の回りの光っている金属って、ほぼ全て磨かれているんです。
それを磨いている職人さんが実は新潟に多くいまして、その人達のシンジケートが「磨き屋シンジケート」です。
日本語に訳すと、金属の磨きを共同で受注をして、磨いて、差し上げる。
その研磨のプロフェッショナル集団が「磨き屋シンジケート」です。

■ 磨き屋シンジケートをなぜ作ろうと思ったのか

 バブルが崩壊した後、もともと燕(=新潟県燕市)の職人さんたちは、鍋や洋食器、日用品の金属製品を磨いていたのですが、 海外から安い日用品が輸入されるようになって、だんだん磨くものが無くなっていった時期が一時期ありました。
その影響で、このままだと業界が滅びてしまうのではないかと危惧がありました。
日用品は日用品で磨くのですが、それ以外の自動車の部品や、ITのコンピューターの部品や半導体など、燕じゃないどこかの企業の仕事を取りたいねとなりました。

磨き屋さんは一社一社が小さく、富研さん(村田氏が先日訪れた磨き屋さん)は燕の中でも一番大きいところなんです。
だいたい、親子、夫婦で経営していて、そういったところが、自動車の部品の受注を1件でできるかというと無理なんですよ。
最低でも、家電の製品でも月5万~10万個磨かないといけないですし、車ですと月何10万以上も…
そういう零細企業は自動車部品や、他の企業に営業しても獲得するのがとても難しかったんです。
そこで、そういった方たちを共同受注グループにしたらいいんじゃないかと思い、磨き屋シンジケートを立ち上げることになりました。

立ち上げたらうまい具合に、いろんな家電メーカーやコンピューターの部品、モバイル機器など今まで全然想定していなかった仕事が集まるようになり盛り上がりました。

しかし順調に進んでいたのですが、リーマンショックの2・3年前から家電の部品の受注が止まってしまい、自動車も止まってしまい、また暇になってしまいどうしようとなり、磨き屋シンジケートに危機感・焦りが生まれました。

そこで、我々燕の職人しかできない、磨きに特化した自社ブランドを立ち上げようとなりました。 そこでビアタンブラーを出した所、株式会社ヨシカワ様のご協力おかげで爆発的な人気になり、今日まで至りました。

コップの中を磨くことによって泡が細かくなるという商品なのですが、今まで金属のタンブラーって中を磨くということはしていなかったんです。
まずコストがかかりますし、見えないところだから別に磨く必要が無いというのが大きな理由ですね。
通常の海外の商品ですと、電解研磨という磨きで中が白く濁った仕上がりになるんですが、磨き屋シンジケートだと中がピカピカなんです。
それは磨き屋シンジケートという腕利きの職人が集まっているから初めてできる加工でして、それがビールをおいしく飲める秘訣です。
今、磨き屋シンジケートのタンブラーはすごく皆さまに愛してくれているのでとても嬉しく思います。

我々が金属のタンブラーを開発した時に、金属のタンブラーでビールを飲むライフスタイルがありませんでした。
当然ガラスのコップで飲むわけです。最初に企画した時に、「そんなの売れるわけ無いだろ」と非難もされました。

たまたま良いめぐり合わせで売れるようになって、やっと今タンブラーもすごく一杯出るようになりましたし、もう今となっては、燕の産業の一つになっているんですよ。
磨き屋シンジケートが一番有名なブランドですが、他の会社も色々な物を出すようになって、全国的に有名な燕の特産品みたいになっているんですよね。

■ 磨き屋シンジケートに所属している会社はどのくらいあるか

 磨き屋シンジケートを始める10年前は人口4万の燕市市内のうち1000件あったのですが、シンジケートを初めた時は600件ほどまで減ってしまいました。

今も減ってはいるのですが、磨き屋シンジケートのメンバーは一社一社の規模がだんだん大きくなりました。
現在は30社ぐらいメンバーがいて一社一社が従業員を増やたり、倅(せがれ)が後を継いだりして、生産能力が徐々に上がっているのですがそれでもまだ生産が間に合わないですね。
タンブラーも納期遅れになっていることもあるくらいに仕事が増えました(笑)

■ 30社をどうやってまとめたのか

 燕研磨工業会と言う業界団体が元々あって、そこに我々、商工会議所が呼びかけました。
最初は20社ほどで立ち上げたのですが、一社一社直接お願いしに行ってまとめていきました。

こういった取り組みをやりたいんですけど力貸してくださいみたいな感じで一社一社お願いしに行っていたのですが、磨き屋さん結構怖くて、最初行っても門前払いだったんですよ。
「会議所が何しに来てるんだと、忙しいから帰れ」としか言われなかったのですが、何回も行くうちにお茶がでてきて...それで今はもうシンジケートの中でも頼りがいがある会社なんですがね(笑)

会社が集まった後、最初の一年は隔週で磨き屋さんが集まって今で言うブレインストーミングをやりました。
共同受注はこういうルールでやりましょう、例えば代金はどうするか、リスクヘッジはどうするかなどなど。
そういう虎の巻みたいな、皆さんのこコンセンサスを1つの文章にしてまとめた共同受注マニュアルというものを作って、磨き屋シンジケートを立ち上げたんですよね。

磨き屋シンジケートはもちろん皆さんその当時仕事がなくて苦しいというものがあったんですけど、やっぱ磨きを通じて地域おこしといいますか、地域振興に繋げるんだと言う大きな目標があって、そこで私も一生懸命お願いして回ったもので、じゃあ一肌脱ぐかみたいな感じでまとまっていきました。

シンジケート立ち上がって少し起動に乗り始めた時、富研の社長から「高野お前なんでうちらがお前についていくかわかるか?」と聞かれたんですよね。
「いや、わかんないです」って言ったら、「お前が汗かいているからだよ」って言われてですね。
結構がむしゃらにずっとやっていたので、そこは職人さんたちの信頼を得たといいますか。
今は本当忙しいですし、各社、会議所がそんな介入しなくても仕事が来るようになったので、今は変な話、仕事を断るのが仕事みたいな感じですからね(笑)

■ 高野さんご自身はどういう思いでひとつにまとめて形にしよう、汗をかこうと思ったのか

 商工会議所ってやっていることが飲み会とセミナーと視察とみたいな感じだったんですよ。景気が良い時はですね。
しかし燕商工会議所の景気が悪くなってきて、じゃあ商工会議所の会員さんはどういったことができるのかと、会員さんに大規模なアンケートをとったんですよね。

そこで大半の中小企業の方が「燕に仕事をもってきてくれ」と仰りまして、まあ当たり前の話なのですがそれが非常に多かったんです。
それで、やっぱり普通だったら報告書作ってハイ終わり、なんですけれども、私自身もこのままだと企業がダメになれば商工会議所もいらなくなるわけですから、この業界であと20年30年飯食っていこうといったら、本質的なことをやらないと地場が持たないんじゃないかと思いまして、一生懸命やったという感じでしたね。

インタビュー:燕商工会議所 総務課 高野雅哉さん
インタビュアー:AppBank Store ハッピーむらた

磨き屋シンジケート インタビュー

■ 職人とは

 職人は仕事を貰いに行くのではなく、依頼されたものに対して応えるのが職人です。

本当の職人さんは、来るものを対応し、お客様に対してしっかり説明できること。
テレビとかを見ていると、だいたいの職人さんは応えて仕事をしていますよね。「仕事をください」なんてことは絶対無いです。

この業界はいろんな職種の職人さんが多くいます。
私も、最初も仕事が色々あった中で作業をしていました。しかし考えるわけなのです。
職業を選ぶにも色々あり、例えば、農業なら農協が一番上で、結局野菜や米を作るところが一番下なんです。全てにおいて言えることは「売る所」が一番強く、要はシステムがわからないといけないのです。

「知恵のある人は知恵を出しなさい。知恵のない人は汗を出しなさい。知恵も汗もない出ない人は静かに去りなさい。」
という経済産業の会長の言葉があるのですが、みんなお互いが持っている一人の人がもっている能力がすばらしく、みんな同じ能力ということはありません。
自分が一番何に向いているか、何を好きになれるかというものを見いだせるかが基本であり根本です。

好きになれないものをいくらやったとしても絶対成功しないですし、職人になんか絶対になれません。
まず、好きになれるか、なれないか。というとには時間は関係ありませんよね。

今の時代の中で、ある程度の職人になっているのは「色々とこなすことができる」人です。
色々できるということは、それだけの時間を費やしているわけなので、人と同じ時間は絶対に過ごしていません。だからできる。そういう人が職人なんです。

いろいろな所でコレ得意ですよと言っても、得意な事が終わってしまったらもう終わりですよね。
研磨というものは単純に見えるかと思いますが、実はものすごく幅がひろいんです。
研磨だけでなくて全てにおいて一つのものをやるにしても、奥深く入っていけばものすごく種類があります。
例えば紙。紙を作るのはとても簡単ですよね。けれど奥深く入れば色々種類があります。研磨も同じです。
研磨の分野は金属だけでなく、木工もプラスチックも磨けます。全て全部磨けます。例えば今村田さんがつけている時計もです。
ただ、それにはみんな材料があります。磨く道具がみんな違います。だから、色々なことを携わらないとやはり見えないわけです。

■ 「職人」という人たちの現状

 どちらかというと職人は少ないと思います。

だけど、自分のやっていることの価値観と言うものは喜んで貰わないと絶対にいけません。
職人は自慢しても駄目。職人といいながらも事業をやる場合は、基本的には絶対お客様に応えて・喜んでもらわないと駄目です。
褒められることではなく、いかに喜んでもらえるかです。

そういったところで、一緒にチームワーク・信頼関係のなかでお互いに得意な箇所を共有しあっていかに反映させていくか、伸ばすのかが今の時代の産業の発展に結びついているのではないかと思います。
また今そういうところがブレイクする状態でしょうね。

あと、やはり従来の状態でやっている企業は、仕事が少なくなっていると思います。
全てにおいて言えることは、良い時に変化をする努力をすること。
良いからではなく、胡座をかくのではなく、常に新しい物を受け入れ、求め続けていく。
だから、忙しいからやらないではなく、忙しい時ほど逆に拒まずに受け入れていくということ。そうでないと時代の流れに取り残されてしまいます。

昔、すばらしいブランドがあったのですが、なくなってしまいました。
そのブランドの名前を築くまでものすごい年数をかけ信用を得たのに、崩れるのは簡単でした。

お客様の信用に、いかに応えらるか。それには色々ノウハウをつけて、色々な話を聞く必要があり、自分だけでなく、相手の話も吸収させてもらうことが重要なのです。

■ 製品の見栄えを良くしないと、お客様の手にとってもらえない

ステンレスをプレスで絞って、形を取ります。そうすると、この状態で飲むことはできます。
穴が開いている限り、実用性には困らないのですが、デパートなどそういう商品として並べてお客様に買ってもらうにはやはり商品が光っていないと買ってもらえない、手にとってもらえません。
我々が誇りを持っている「研磨」というのは、力を出して見栄えを良くしないといけないという使命があります。

■ 研磨のこだわり

プレスで絞っただけで、何も磨いていないものを、ペーパー・サイザルなどの全部で7つの工程を経て鏡面まで磨き上げます。
鏡面仕上げの1つのこだわりというのは、磨くと「バフ目」が入るのですが、それを鏡のごとくバフ目を無くします。
従来の製品は皆メッキで、それをバフ研磨で鏡のように光らせるという、それが鏡面仕上げという研磨の技術でして、これは業界の中でも一部の人が仕上げる技法です。

研磨の基本というのは、磨いた時に目が入ります。
その入ったものを斜めに磨いていていまして、そうでないと、同じ状態に入っているとその目がわからなくて、仕上げるとまた目が打ち出てきてしまいます。
斜めに磨くことが研磨の基本で、それを重ねる事によって目を消し艶を出しています。

鏡面仕上げというものの本来は、光らせることはできますが、バフ目を消して鏡面仕上げにすることは、従来本当はタブーなんです。
磨くということは目が入るので、その目をあえて消すわけなので、基本からは外れた行為なんです。
それを、こういう風にして鏡面に仕上げると言う技法を、燕の職人さんは考えました。
何度も研磨をかけ、表面が硬化すると目が入りにくくなります。そしてどんどん鏡面に持っていき、美しい仕上がりになるのです。

■ ビアタンブラーの内側の磨き、クリーミーな泡立ちが長続きする秘訣

実は、全て鏡面で行うとダメだったんです。
職人さんが知恵を出し合い、何度も研磨をすることで出来たものが、中底をヘアライン加工(螺旋状のもので、不織布で目を入れる)にすることでした。

ビールを半分一気に入れてから、タンブラーを傾けて少しずつ入れ、細かい泡を立てます。
そうすると、螺旋状の内面から細かい気泡が常に出てくるので、クリーミーな口当たりで飲めます。
また、螺旋状にしたことで、しばらく良い時間ずっと気泡が立つのもポイントです。

■ 富田さんが思う、職人・研磨

我々の業界研磨と言うものは磨いて、光らせて、価値が頂けるという仕事をさせてもらっています。
ただ作業的に磨いてけばいい、光っていればいい、というような形のものは作業であって職人がやる仕事ではありません。

職人がやることは、お客様に依頼されたものに対してそれに応えることがデキるノウハウをみにつける、来るものを拒まず取り入れ身につけ体験することです。

どうしても決まったものだけをやっていると得意になりますが、時代の流れでその仕事が急に少なくなって足りなくなった時に違うものをしようとすると、できるんだけど事業として成り立つかと行ったら大変ですよね。

時代の流れというものは、来るものを拒まずに受け入れやっていくというのが時代の流れであって、砂物を求めるというのは時代の流れから消えていくように自分から向かっていっているように思います。

一番のプロとしての仕事、職人さんの仕事が足りないと言うことがそもそもおかしいと思いますが、どんなものであろうが、来るものを拒まずに話に応じて対応し受け入れていくことがとても重要だと思います。

「色々なものを体験して、経験を積むことによって色々なものをお客様に喜んでいただく」
これが基本、私達の信念です。

インタビュー:磨き屋シンジケート 有限会社 富研工業 富田宜光さん
インタビュアー:AppBank Store ハッピーむらた

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