素の音を味わえる。有線級の完全ワイヤレスイヤホン「final ZE3000」をレビュー

final ZE3000

株式会社final(神奈川県川崎市)から発売されたfinalブランド初となる完全ワイヤレスイヤホン「final ZE3000」を試してみました。

ワイヤレスイヤホンが有線イヤホンに劣る点として最も大きな壁が「音質」。ワイヤレスイヤホンは、音楽データを圧縮してスマホから伝送する関係上、どうしてもダイレクトにコードを通じて音楽を送る有線イヤホンには負けてしまいます。

しかしながらこの「ZE3000」は新たに開発した『f-LINK(エフリンク)ダンピング機構』により、イヤホン筐体内にある音響空間の圧力を最適化して低域が強調されすぎない自然な音作りに成功。

さらに、これまた新設計のドライバーユニット『f-Core for Wireless』が生み出す歪(ゆが)みの少ない振動が明瞭かつ空間の広がりを手にとるように感じさせてくれます。

イヤホン筐体内部構造とドライバーのあわせ技一本で、アーティストが本来聴かせたい音を忠実に耳へ届けてくれるのです。まさに、素の音を味わえるイヤホンだと言えますね。

今の完全ワイヤレスイヤホンでは主流のノイズキャンセリングや外音取り込みといった機能は搭載されていません。流行には目もくれず、愚直に良い音作りにこだわっていて、音質に全振りしているイヤホンですね。

おかげで販売価格15,800円(税込)ながら、2~3万円の完全ワイヤレスイヤホンにも見劣りしない高音質だと感じました。

ということで、ハイエンドイヤホンに匹敵する高音質にもかかわらず、お値段的にグッと抑えた「final ZE3000」の魅力をじっくりお届けします。

製品仕様はこちら。

  • 製品名:final ZE3000
  • JANコード:4571303222278、4571303222285
  • カラー:ブラック、ホワイト
  • ブランド:final
  • メーカー:株式会社 final(神奈川県川崎市)
  • コーデック:SBC、AAC、Qualcomm aptX、aptX Adaptive
  • Bluetoothバージョン:5.2
  • 最大再生時間:単体利用で7時間、ケース込みで35時間
  • 充電時間(約):イヤホン本体1.5時間、充電ケース2時間
  • バッテリー容量:イヤホン本体35mAh、充電ケース300mAh
  • ドライバー口径:6mm
  • ノイズキャンセリング:非対応
  • 外音取り込み:非対応
  • 片耳再生:対応(モノラル再生)
  • ハンズフリー通話:対応
  • 防水等級:IPX4
  • ボタン操作:タッチパネル
  • 同梱物:「final ZE3000」本体、充電ケース、final TYPE E 完全ワイヤレス専用仕様イヤーピース(SS・S・M・L・LLサイズ)、USB-Cケーブル、説明書

アーティスティックなフォルムが斬新

final ZE3000

外観からチェックしていきます。

音へのこだわりも凄いんですけど、プロダクトとしてのデザインのこだわり人一倍感じます。

final ZE3000

ケースの表面とイヤホン筐体の全面には、高見えするストーンのようなシボ塗装仕上げになっています。

final ZE3000
final ZE3000

なんだろ、この質感・・

高級なホテルのロビーにある現代アート作品とか、そこそこお値段のはるいいトコの温泉旅館ってこんな感じの床してません?笑

なんともいえないアーティスティックなセンスを感じますね。個人的には指ざわりが良くて好みですね。

final ZE3000

カラバリにはブラックとホワイトの2色があります。

final ZE3000

どちらも光があたったときに独特な反射をして綺麗です。ミニマルな外観ながら、上品なストーンのようなシボ塗装デザインに高級感を感じさせます。

final ZE3000

コンパクトなケースで厚みもそれほどありません。ズボンのポッケやシャツの胸ポケットにもすんなり入る小型ボディですね。

final ZE3000

イヤホン筐体は幾何学的な形状をしていて、なかなか見ない斬新なフォルム。

実はこの形には理由があって、快適な装着感と耳への負担軽減を考えられて設計しているんです。付けてみた様子は、後述します。

final ZE3000

その他の付属品としては、イヤーピースが5サイズと充電用のUSB-Cケーブルが入っていました。

イヤーピースはSS・S・M・L・LLのサイズ展開になっていて、デフォルトではLサイズが装着されています。

final ZE3000

地味なんですけど、イヤピの軸の色がSとLだけちょっと濃いグレーになっています。並べたときにサイズの違いが分かりやすいよう配慮されているんですね。

final ZE3000

小さなイヤピを並べただけでは、どれとどれが同じサイズなのか分かりにくいことってありますよね。そんな不便を解消してくれる些細な点にも、使う側のことを考えたユーザー視点があって素晴らしい。

final ZE3000

防水性能はIPX4に相当していて、雨に降られても動いて汗をかいても支障なく使えます。ただしケースの方には防水性能はありませんので、留意しておきましょう。

final ZE3000

装着するとこんな感じ。

ちょっぴり見た目的に飛び出したように見えてしまうのが・・個人的には残念。

好みもあるかもしれませんが、欲を言えばもう少しだけハウジング部分が小型で目立ちにくいと良かったかな。

ケース込みで最長35時間のバッテリー持ち。外で安定したワイヤレス接続

final ZE3000

再生時間は、イヤホン単体で連続して最長7時間再生、ケースに収納して充電を補うことで最長35時間再生もバッテリーが持ちます。

プライベートで旅行に出かける際やビジネスで出張に行く際の長距離移動用にも頼もしい再生時間だと思います。

final ZE3000

充電にはUSB-Cケーブルを接続します。ケースはおおよそ約2時間でフル充電できます。残念ながらワイヤレス充電には対応していませんのでした。

final ZE3000

スマホ等のBluetoothデバイスとの接続にはBluetooth5.2に対応しています。僕のiPhone13Proと接続した感じ、ストレス無くペアリングできました。

また、一度接続すれば2回目以降からはケースから取り出すだけで接続する『オートペアリング機能』にも対応しています。この辺りは、新しめの完全ワイヤレスイヤホン同様に使いやすいですね。

ちょっぴり角張った筐体をしているおかげでケースからイヤホンを取りやすいのが意外とポイント高めでした。

多くの完全ワイヤレスイヤホンって丸みを帯びているので、乾いた指だと滑ってケースから取り出しにくかったりしません?そういったときに指先へひっかかりができて掴みやすかったですね。

final ZE3000

接続の安定性も検証してみました。

混んでいる電車内や電波が飛び交う駅前などでも、Bluetooth接続は安定していましたね。移動中や街中でも音が飛んだりせずに快適でした。

面ではなく点で支える負担の少ない装着感

final ZE3000

イヤホン片耳の重さや約5gあり軽量ではあるものの、めちゃくちゃ軽いっていう訳ではありません。

しかし、付けてみてビックリ。すっごく軽快で快適な付け心地だったんです。

その秘密は、面ではなく点で支えるfinal独自の設計にあります。

final ZE3000

耳穴や入り口付近をイヤホンでぴったり塞ぐのではなく、耳に接触する面積をできるかぎり少なくすべく、3点で支えるようなイメージです。

final ZE3000
メーカー提供画像

外側の耳ポケットで1点、外耳道の入り口にある耳珠(じじゅ)で1点、そして耳穴にあたる外耳道で1点、合計3点を軸にして点で支えてくれます。

それによって圧迫感のない軽快さ、それでいてしっかり耳に固定されているホールド感を両立しています。

final ZE3000

イヤーピースにはfinalお馴染みの「TYPE E 完全ワイヤレス専用仕様」が付いています。耳穴奥までささるというより、手前側の浅い位置で固定してソフトな装着感を感じます。

3時間ほど付けっぱなしにして作業中に使ったあとでも、耳とイヤホンの支えになっていた部分が痛くなることもなく、他のイヤホンに比べて疲れ具合が圧倒的に少ない印象を受けましたね。

カナル型の閉塞感や圧迫される感じが苦手な人にも受け入れられるのではないかなって思います。

final ZE3000

遮音性は比較的高めなので、走行音が響いている電車内でも使えるレベルでした。

ただ、地下鉄みたいに走行音が尋常じゃなく響く場所だと音楽が聴こえなくなってしまい、音量を上げざるを得ないですね。

final ZE3000

ボタン操作は、タッチパネル式が採用されています。

タッチして反応する部分はロゴが印字されている面ではなく、その後ろの面になります。分かりやすいし、タッチレスポンスも良くて操作しやすい部類だと思います。

操作方法は、左右どちらかをワンタップで音楽の再生・一時停止、右をダブルタップで音量アップ、左をダブルタップで音量ダウン、右を長押しで曲送り、左を長押しで曲戻しなど基本操作ができます。

アーティストが伝えたい「素の音」を届ける新設計

final ZE3000

対応しているコーデックが豊富でSBC・AAC・aptX・aptX Adaptiveの4種類。iPhoneで使えるAACや最新Androidスマホで使えることが多いaptX Adaptiveにも対応していて音楽データの伝送パフォーマンスは高いと言えます。

そして音質に振り切ったワイヤレスイヤホンだけあり、ドライバーユニットと筐体内部構造を根本から見直して新設計している点が最大の魅力です。

final ZE3000
メーカー提供画像

6mm口径の新設計ドライバー「f-Core for Wireless」を開発。振動板の振れ幅を一定に抑えて歪みの極めて少なさを実現。

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さらに、イヤホン筐体内部の圧力を最適化する「f-LINK ダンピング機構」を採用。一般的な完全ワイヤレスイヤホンはバッテリーや電子版を水から守る必要があり、空気の圧力を調整する通気孔(ベント)を外部に設けることができません。

そうなると、どうしても低域が増幅し、その誇張された低域にあわせて高域を強めてバランスを取る必要があります、いわゆるドンシャリってやつですね。

もうお分かりだと思いますが、中間の中域が埋もれてボーカルがボヤケてしまうんですよね。イコライザーで中域を調整するなど対策はありますが、ソフトで電子的に調整する関係上、自然な聴こえ方は損なわれてしまうんです。

そこにきて「f-LINK ダンピング機構」が低域を適切にコントロールして中域が前に出てくれるようになるって訳です。

final ZE3000

実際しばらく視聴してみた感想でいうと、まさに「素の音」を体感できるようなクセのないフラットな高音質でした。

繊細なボーカルのビブラート、そして今まで聴こえていなかった息遣いまで耳に入ってきます。楽器の残響音も美しく横に広がり、シンバルを叩いたときのジャーーンっていう音も電子的なものではなく、聴こえの良い生に近い綺麗な音の残り具合だったり、伸び具合を体感しました。

この辺りもアーティストの意図した歌い方だったり楽器の鳴らし方を素直に感じ取れますね。

final ZE3000

中音域の見通しが良くて、豊かな音場の広さに効いています。繊細で澄んだ空間表現が素晴らしい音質ですね。静かな森の中にひっそり佇む波風一つたっていない湖畔。そこに小さな石を投げ入れたときに広がる波紋のように、静寂に音が綺麗に広がるイメージ。

低音のブーストした圧がなく長時間でも聴き疲れしにくく、高音の鼓膜に刺さる強さもなくてスッキリ。

電子的に鳴る今までのワイヤレスイヤホンとは一線を画する自然な音ですね。アーティストが伝えたい意図をリスペクトして原音を素直に鳴らしてくれます。

有線級の音質をワイヤレスイヤホンで実現しているってのが良く分かりました。

final ZE3000

その一方で、ドンシャリに慣れている人からすると、低音域の圧力とか力強さに物足りなさを感じるかもしれません。特にアタック感の強いEDMや重めのヒップホップとか。

final ZE3000

元気の良いノリノリ系の音楽を聴くならドンシャリ系のイヤホンをチョイスした方が良いと思いますが、歌ものとかアコースティック・クラシックなど楽曲そのままの音を楽しみたい人に「final ZE3000」を使ってほしいですね。

片耳でのモノラル再生、オンライン会議で使える通話品質

final ZE3000

左右のイヤホンどちらとも片耳での音楽再生に対応しています。片方のイヤホンを充電ケースに収納するだけで、音が途切れることなくステレオ再生からモノラル再生に自動で切り替わります。

モノラル再生への切り替えに関しては、SBCとAACコーデックのみ対応しているということです。普段からiPhoneで音楽を聴く僕のようなユーザならもともとAACコーデック接続なので、音質を損なわずに再生できるメリットがありますよ。

ちなみに音楽だけでなく、iPhoneのYouTubeアプリで動画を観ているときにも片耳再生ができました。

外で移動中にラジオ感覚で動画を聴きながら歩くときに便利でしたね。周囲の交通事情に気をつけつつも耳活できました。

final ZE3000

パソコンとペアリングしてオンライン会議にも使ってみました。

音声の集音性もまずまず良くて、通話品質についても問題ありません。すごくクリアかと言えばそうではありませんが、ビジネスで十分使えるレベルかなといった感想です。

動画レビューはこちら

ライターから一言

ドンシャリが多い完全ワイヤレスイヤホン市場において、ソフト面で電子的に着色せず、楽曲本体の音を素直に鳴らしてくれる文句ない高音質イヤホンでした。ドンシャリではなく、フラットな「素の音」を求める人におすすめしたいですね。